梅雨空が広がるなか、幕張の海は冬の日本海のように少し波立っていた。午前に行われた一般の部はスイムが中止になり、砂浜のランニングに変わったほどだ。海外の外洋に面した街で行われるレースでは波が高いのはよくある話だ。女子が海でウォーミングアップしていて、「こんな波でも(レースを)やるの?!」という観客の声がチラホラ聞こえてきた。
そんな中、15名の女子がスタート。遠浅の海岸のため、30Mくらいはビーチラン。ここで川島選手は出遅れてしまう。ほぼ最後尾の位置で海に飛び込む。第1ブイまでの300Mは波にのまれながら前を追う川島選手の姿が確認できた。1周回のスイムは結局川島選手はトップから10秒遅れの4番手でスイムをフィニッシュ。バイクに移った。トランジット(スイムからバイクへの切り替え)でも遅れをとってしまったが、比較的表情は落ち着いていた。6周回のうち2周回目でトップ集団は菊地選手、太田選手そして高橋選手。先頭から約30秒遅れて上田選手が単独、そしてそこから30秒遅れて川島選手と梶田選手(チームブレイブ・村上塾)が第3集団を形成。先頭の3名はテンポよい息のあった先頭交代で、後続を引き離し上田選手に約80秒の差をつけた。川島選手たちの第3集団もそのまま先頭から約1分45秒遅れでバイクをフィニッシュ。エリートレース初参戦だった川島選手は、落車などなく無事ランニングに移った。本人も気持ち的に集中していたのだろう。3日前にいためた足の調子が心配されたが、2周目になると走りがよくなり、結局そのまま粘り、5位でフィニッシュ。課題だったバイク先頭集団での展開こそ実現しなかったが、次につながる良いレースをした。一方トップは、1分40秒差の4番手でスタートした上田選手が、ラストの500Mで二人をかわす抜群の走りをみせたのもの、菊地選手が意地の走りをみせ優勝を飾った。
女子ゴールに沸く会場を尻目に、男子がスタート。女子とは打って変わって、迫力ある入水だった。佐藤選手はインコース4番目からスタート。今期日本人男子勢のなかで、世界選手権シリーズでも活躍している細田選手が観衆をうならせるテクニックで、後続に約20秒差をつけバイクにうつった。スイムが課題の佐藤選手だが、無難な泳ぎで先頭の細田選手から30秒遅れの4番手の好位置でスイムをあがった。バイクは細田選手が独走。それを5名の第2集団が追うものの、積極的な細田選手の逃げに後続は対応できず、細田選手との差は30秒、40秒、50秒と周を重ねるごとに広がっていった。動きがあったのは4周回目。長谷川選手が長い直線で前に抜け出し、単独で細田選手へ向かっていく。残された4選手から、佐藤選手が長谷川選手を追い、5周目には二人で細田選手を追う形に。しかし、トップの細田選手はその二人に約40秒の差をつけランに。佐藤選手は懸命に細田選手を追い、前半はすばらしい走りを見せる。細田選手を鼓舞する場内MCに、”まだわからんで”と虎視眈々と沿道から通り過ぎる選手たちを見ていた。しかし佐藤選手は、バイクで積極的な走りを見せた疲れが後半でてきて、失速。佐藤選手の第2集団から約30秒遅れてランをスタートした杉本選手が逆に意地の追い上げを見せる。ラストの3周目で佐藤選手は杉本選手に抜かれ、その後も緊迫した2位争いを見せたが、結局そのまま杉本選手が佐藤選手をかわし2位に。佐藤選手は3位でフィニッシュした。
ゴール後、選手にとっては興奮冷めやまぬ中で、応援に駆けつけてくださった30名の社員とご家族に応援お礼の挨拶をしたが、佐藤、川島の両選手ともいいコメントをしていた。”そんなことを言えるようになったんだなぁ”と感慨深いものを感じた。紙面的な結果には不満足だが、確実に次につながるいいレースをすることができた。
(陶山昌宏)
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